たまには旅に出ようじゃないか
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いつ頃からだったろう

おそらく高校生の頃だったろうか
自分の寿命は「55才」であると
なんの根拠もなく決めてしまっていた

当時は本を漁るように読んでいた
なんでもよかった
とにかく活字に飢えていた

時には古い言葉を学び
時にはその生き様に魅せられ
そして
時には登場するヒロインに恋心を抱いた

読む本ごとにいろいろな世界や時代を
旅することが出来た

高3の時
司馬遼太郎さんの「龍馬がゆく」に触れた
胸をワクワクさせながら読んだ覚えがある

世間知らずの青二才の頭には
「維新」と言う歴史的イベントよりも
龍馬の人間関係の広がり方に惹かれたのだろう

しかし幕末における志士の生き様は
当時の青二才に長寿を望む気持ちを捨てさせた
とは言えど55才とはなんとも中途半端

天声のように自分の脳に響いたのだろう
以降55才という節目は
自分の気落ちに刻み込まれた

ところがその節目の年齢を迎え
いよいよだと感じつつ

そして何事もなく過ぎてしまった時

どこか拍子抜けしたというか
あれはなんだったのだろうという
いかにも自分勝手な矛盾がまた
形容し難い違和感を生んでしまった

予想していた通りに
寿命のページは閉じられることはなかった

しかし今私の傍には
優しい妻がいる

妻との馴れ初めもまるで物語のような
出会いと奇跡に満ちていた

彼女が妻となってくれたという出来事で
おそらく一生分の運を使い果たしたに違いない
それでも後悔などあろうはずがない

彼女との出会いが一世一代のドラマであり
私の人生の再出発だった

Restart

辛いことがあっても
傍らの妻を見てあの日のことを思う

一人じゃないことに
気づいた時が
自分自身のRestart

Resetなんてしなくてもいい
自分は自分であればいい

だから
いつでも

Restart